町のひと

静岡県内からの移住者

趣味で畑しごとやネコのお世話を楽しむ日々。「人」と「仕事」が最高だと語る、鈴木さんのインタビュー

鈴木さん

不登校に悩んだ娘が中学校に入学するタイミングで、移住を決意した鈴木さん。

-早速ですが、川根本町に引っ越しされる前はどちらにお住まいだったんですか。

鈴木さん:同じ静岡県内、地元の御前崎市です。これまでほとんど地元から出たことがなかったんですが、ちょっと思い切って移住しようと考えました。

-移住されようと思ったきっかけは?

鈴木さん:もともとこちらに知人がいて、小さい頃に遊びに来ていました。川遊びをしたり桜を見たり、楽しい思い出です。娘が小学4年生の頃からコロナなど生活環境の変化で学校にいけなくなってしまったんですね。それで中学に上がるタイミングをきっかけに移住しようと考えました。環境を変えれば学校に行けるようになるんじゃないか、という考えと、知人から「(川根本町は)子どもが少ない」という話を聞いて。ちょうど小学校も再編されて、3つが1つになるという話なども聞きました。子どもの人数が少ない方が、娘もコミュニティに入って行きやすいのではないか、と考えたんです。

鈴木さんは、子どもの数が少ない方が、娘がコミュニティに入って行きやすいと考えたそう(写真はイメージ、川根本町立本川根中学校のホームページより)

-生徒の人数に対して、小学校の先生の数が多く、都心よりもこちら(川根本町)の方が目が行き届きやすいという話も聞きますね。実際に住んでみて、まちに対して住む前にイメージしていた生活との違いはありますか?

鈴木さん:それほど差異はないと感じています。もともと手を動かすことが好きで、田舎に暮らしたいという希望がありました。今は畑にチャレンジしたり、料理をこだわって作ったり、ハーブを育てて乾燥させたもので匂い袋を作るなど、楽しんでいます。思った通りの場所だな、と感じると同時に、やりたいことがやれていると思います。すごく人もいいんですよ。

-皆さん「人がいい」と言いますよね。ご近所付き合いなどはどのようにされていますか。

鈴木さん:私が今住んでいるところは、世帯数が少なく、おそらく50世帯あるかないかぐらいだと思います。ほとんど高齢の方ばかりのところに女性2人で住んでいるので、とても気にかけてくれている感じがあり、よくお野菜をいただいたりします。娘が学校から帰ってくると、近くで雑談されている近所の人が「今日どうだった?」のような声かけもしてくれるんです。「何か困ったことがあったら言うんだよ」とおっしゃってくださいます。

-今、お住まいになっているご自宅はどのように探されたんですか。

鈴木さん:今の家を見つける前に、空き家バンクか何かを見て、別の「このおうちがいいな」と思うところがあってその物件の窓口になっていた工務店さんに問い合わせをしたんです。そしたら「こちら(川根本町)には住めるところがいっぱいあるよ」と、いくつかの物件を見に連れて回ってくれました。そのうちの1軒を選んだ感じです。

川根本町の空き家バンクの物件画像

川根本町の空き家バンクでは、さまざま物件を紹介している

-移住までの流れはどのように計画されましたか?

鈴木さん:「川根に移住しよう」と思い立ったのが、娘が中学校に上がる前の年の12月で。中学校に進学するまでに3ヶ月しかありません。家を購入しようと思っていろいろな物件を探して見つかったのが1月末でした。急いでいろいろな手続きを行い、2ヶ月位でバタバタと引っ越しをした感じです。そのため、中学校の制服の手配もギリギリで、学校に相談して採寸をしてもらい、何とか入学に間に合わせた状態でした。冬服は間に合ったんですが、夏服が間に合わなくて、しばらく冬服で過ごした時期がありましたね(笑)。

-転入等の手続きに町役場に行かなければいけないなども大変だったと思いますが……

鈴木さん:空き家バンクを利用しての移住だったので、役場の方と全てを調整していく形になりました。経営戦略課の担当の方が全部付き添ってくれて、ご近所に引っ越しの挨拶に伺う時なども一緒に回ってくれたんです。わからないことがあれば電話1本で答えてくれ、就職先の相談に乗ってくれるなど、すごく手厚く対応してくれました。役場に貼ってある求人の紙を見て「(就職先として)少しここ考えているんです」という話を役場の方にしたら、移住コーディネーターの神東さんを紹介してくれて「ここに電話するといいよ」と教えてくれました。電話して、面接をして、「履歴書送ってね」という流れで決定しました。

移住コーディネーターの神東さん。仕事だけでなく、住まいや生活に必要な場所も案内してくれる。

3月末に引っ越されてから約3ヶ月(取材は6月に実施)、実際に住んでみて一番良かったと思うことは?

鈴木さん:意外に思われるかもしれませんが、「仕事」です。1番ネックだと考えていたのは、やはり就職先だったんです。それも世帯数が少ない中で、長期的に働くには、一緒に働く「人」が1番大事だと考えていました。入社して3ヶ月、ほんとに「人」が最高です。

まず、社長が私たちがこちらに引っ越しをしたタイミングで、いろいろなところに連れて行ってくれました。関係各所への挨拶も含めて「川根本町ってこんなところなんだよ」と紹介してくれたんです。それがあったから、スムーズに住み始められたところも大きいと思います。そのように、気遣いのできる社長のもとで働く人たちは、本当にいい人が集まっていて魅力的な会社です。

私は会社では経理や総務を担当しているんですが、人事の仕事なども少しずつ教えてもらっています。

鈴木さんが勤める会社、KAWANEホールディングス代表の迫さん(関連記事

-お仕事のある日はどのようなタイムスケジュールで過ごされてるんですか?

鈴木さん:私は朝起きるのがとても苦手なんですが、起きて支度してそのまま家を出て、娘を学校に送って会社に向かいます。帰宅したら洗濯機を回して家事をする合間に、畑などの趣味をちょこちょこ挟んでいる感じです。

うち、ネコを飼っているんですよ。実は最近生まれたばかりの子猫が5匹いまして、その子たちの手入れをしたり。猫のお世話をしながら晩酌してお風呂に入って寝る生活です。ネコは移住する前から飼っていたので、住まいは賃貸じゃなくて購入したいというのがありました。

-広い家だからこそ、遠慮なく飼えるところがありますよね。間取りは?

鈴木さん:5DKに納戸がひとつある感じです。ただ、意外と住んでみると、直さないと使えない部屋も多く、これから手入れしながら住めたらいいなと考えています。

-畑では何を育てているんですか。

鈴木さん:きゅうりと茄子とミニトマト、あとここにバジルがあって、里芋、ネギ。ほとんど社長がくれた苗なんですよ。サンチュと落花生、あとオクラもありますね。先日、鹿が食べちゃったんです。畑を見に行ったら、葉っぱが何もなくなっていて、あれ?と思ったら、鹿の足跡がいっぱい付いていました。それで(御前崎市にいる)父に相談して柵を作ってもらったんです。ほんとに鹿が出るんだ!とびっくりしました。

獣害はありますが、一方で猟師さんや「わな師」の方もいて、ジビエのお肉を購入しています。

鈴木さんの趣味の畑の画像

鈴木さんは趣味で畑を楽しんでいると言う

-こちらに引っ越してきて、生活がガラッと変わったことなどはありますか?

鈴木さん:遊びに出なくなりましたね。何もないので。以前は夜に「ちょっと遊びに行こう」と言って出ることもあったのですが。スーパーなどもないので、土日のどちらかは買い物に遠出する生活をしています。

-生活の質は上がったと感じますか?

鈴木さん:子どもに向き合う時間が増えたというのはあります。今ちょうど思春期でもあり。地元にいた時は、両親に頼ることが多かったのですが、今は私自身ができるだけやらなきゃという気持ちで、自分が強くなったように思います。そして私だけではなく、おそらく娘も「自分でやらなきゃいけない」と思うことがいろいろあるのではないかと感じます。

-逆に良くないところはありますか?

鈴木さん:虫が多いところだけですね。囲炉裏のある居間を気に入ってこの家に決めたんですが、開けてみたら床下がシロアリでやられていて、畳の下の板も結構腐っていて、そこをきれいにしないと使えないんです。また、毎日ビックサイズのムカデが出るので大変な思いをしました。ネコが刺されないか、という不安も。クモも出るし、ゴキブリも出ます。

これから床や壁などの隙間という隙間は全部塞いで虫が入れないようにしようと考えています。川根本町は移住するにあたって、古民家を空き家バンクで購入すると、リフォーム代の補助が出るんです。実際にかかる費用の2分の118歳未満の子どもがいる家庭だと上限100万円の補助金です。

今は1年間、賃貸で借りて、1年後に購入という形になるので、購入したら200万円かけてリフォームするのが(経済的にも快適に住むためにも)1番いいかなと考えています。

「川根本町移住ナビ」では住宅だけではなく、さまざまな支援制度なども紹介している

-最後に、移住を検討されている方へメッセージやアドバイスをいただけますか。

鈴木さん:川根本町はシングルマザーの方にはとてもオススメだと思います。子どもに対する学校の対応も手厚く、かなり融通をきかせてもらっています。

ご近所の方も「あなたたちが入ってきてくれて、おうちに明かりが灯っているのがすごく嬉しい」と言って、お世話をしてくださる方がたくさんいる。本当に「人」がいいところです。1人で子どもを育てることは大変で、気持ち的にも休まらないところもあると思うんですが、学校や地域の方が見ていてくれる安心感があります。歩いていても「ああ、○○ちゃん、さっきあそこを歩いていたよ」など、みんなで見守ってくださっている感じがすごくあります。

子どもを地域全体で育てる環境は、子どもの笑顔にもつながる。

娘は学校に行けなかった時期があるので、支援学級に通っていますが、先生方もいい先生ばかりで。支援学級は私の娘を含めて生徒が2人なので、担任の先生1人が2人の生徒を見てくれる環境で手厚いです。他のいろいろな先生も気にしてくれて「○○ちゃん、こうだったよ」「今日は学校でこういうことがあったんだよ」と娘の様子について多くのことを教えてくれます。

住む人の数が少ないからこそ、驚くほどのつながりもあり、「みんなで育ててくれる」と感じられるところがとても大きいです。子育て中の方に特におすすめしたい環境だと思います。

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