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ファイナンシャルプランナー波柴純子さんが聴く〜シングルマザーの仕事と子育て〜旅するコンフィチュールの違さん【後編】

環境を変えることで、娘とのコミュニケーションを創る

独立して実際にスタートしてみると大きな問題が発生しました。職場と、娘の学校と、自宅、3箇所それぞれが遠くて。自宅は元夫の実家や学校、塾という子どものコミュニティーが近かったので、それをなるべく壊さないようにと思って引っ越さずに、忙しくてどうしても遅くなるときは、元夫の実家に預けていたのですが、遅くなる日はおばあちゃん家に行ってご飯食べてね、泊まってねという生活を続けていたら、娘から本当に信用を失ってしまって。
たまに頑張って早く帰ってご飯を作って待っていても、「もうおばあちゃん家で食べちゃったよ。今日も泊まるから帰らないよ」という感じで、1週間会わない日もありました。
親子間に距離ができちゃったのですね。
はい。1年間その生活を続けて、親子関係も怪しくなって来ると、子どものコミュニティーよりも大切なことがある、と気づき、仕事場の近くに引越しすることに決めました。
お引越しされてからは何か変わりましたか?
ガラッと変わりました。
家と仕事場が近いと、一旦家に帰ってご飯を作って家事を済ませてまた仕事場に戻れる。自由度が増し、ストレスが減りました。
娘が学校の帰りに仕事場に来ると、コンフィチュールを作りながらご飯を作って食べさせて、一緒に帰るとか、なんとでも融通がきくので、自分で生活をコントロールできるようになりました。
それは良かった!では親子関係も良くなったのでは?
、、、笑
初めは一緒に過ごす時間が増えた分、娘の行動が気になってしまって、娘の方も口うるさく言われるので、お互いストレスになってしまいました。
思春期ですもんね。
そこは未だに難しいところ。
でも以前と比較すると圧倒的に一緒にいる時間が増えて、ご飯は毎日一緒に食べるようになって、話もするから、学校で何があったかなども今はほぼ把握しています。
最近はお仕事を手伝ってくれるようになりました。
素敵!お料理も上手なの?
お料理ではなく、ゴム紐を同じ長さに切ったり、シールを貼ったりを手伝ってもらっています。
いいですね。 そばにいて流れを知っているから安心して任せられますね。
以前は、「お手伝いなんて絶対いやだ」と言っていたけれど、一応アルバイトとしてお小遣いをあげるので、ちょっとお小遣いに困ると「ママ今やることない?」って。
あはは、可愛い。労働の対価ってことも学べるし、親が頑張っている姿を見られるし、コミュニケーションもとれていいですね。

シングルマザーになって得られたもの

ご自身がシングルマザーになって得られたことは?
自分の人生を生きられるようになったこと。
娘が生まれてから妻として母親としての役割をとても要求されていたので、お仕事もさせてもらえず、今のわたしを知っている人からすると本当に別人のようだったと思います。
26歳で結婚して以来働いていなかったので、働きたい、仕事が好き、という自覚がなかったんです。でも必要に迫られて働くうちに仕事が大好きになって、今はあの生活でなくて良かったなって思います。
それは、子どもがいなければ得られなかった人生?
娘がいたから頑張れる。 一人だったらどこを目指していいのかわからなかった。
子どもがいるとどうしても一旦手を止めてご飯を食べさせなきゃいけない。子どもがいなくて好きなだけお仕事ができたらもっとお仕事も伸びるとか思うけれど、いい意味で制御されているというか。
制約が工夫を生みますよね。
そう。例えば引越しもそうですが、自分だけだったら仕事場で寝泊まりしていたかもしれない。娘に恥ずかしくない人でありたいという、良い意味でのプレッシャーもあります。

今後のビジョンについて

今後のビジョンはありますか?
まずは子供を一人立ちさせることです。3年間本当突っ走ってやってきてこのまま上がっていきたいなっていうのがあるんですけど、娘の大学受験で大事な時期なので、バランスを見ながら家族に比重を意識的に置くようにしたいなと。
なるほど、仕事が大好きだからこそ意識しないとバランスを崩すかもしれないですよね。お子さんが自立された後のイメージもありますか。
今のやり方だとどうしても体力仕事なので、5年後に同じ仕事量はできないと思うのです。
このままスモールビジネスのやり方でいくのか、もうちょっと事業を大きくして雇用を産み出せるようなやり方にしていくのか、正直迷いもあります。でも私の性格的に切羽つまってからじゃないと動けない(笑)もうすぐそのタイミングが来るのかな、と予感しています。

そして、カフェでお仕事をしていたときに、若い女性たちに何かアドバイスしたり役に立てたりすることにとてもやりがいを感じたので、自分がある程度安定したら、そういう人たちのサポートをできたらいいなと思っています。
素敵ですね。
こんな私でもなんとかやって来れた、という経験もですが、とはいえ、いきなり起業はリスキーだということも実体験としてお話しできると思います。私自身が専業主婦の時に離婚することになり危機に陥ったので、まずはシングルマザーでもそうでなくても自分で生きていけることが基本にあって、経済的に自立できると自由だということを伝えていきたいです。
これからの時代、すべての女性にとって必要なメッセージですね。

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この対談のメンバー

  • 波柴 純子さん

    子供が3歳の時にシングルマザーとなり、お金の不安がきっかけでファイナンシャル・プランニングに関心を持つ。
    それまで苦手だったお金・制度の知識を学ぶとことで日々の暮らしが安心に変わるのを感じ、これを他の人にも伝えたい、と転職を決意。

    金融機関のファイナンシャル・アドバイザーとして約7年の経験を積む中で、子育て世代の多くが抱える未来への漠然とした不安をなくすには、お金のリテラシーを持つことと同時に、自分の価値観を明確にすることが必要だと確信するようになる。

    2013年に独立し「私が未来をデザインする」という想いを込め、Cras-i design(クラシデザイン)と名付ける。
    シングルマザーや起業家など、本気で自立したい女性にを対象に、個別相談・講演・執筆活動を行っている。
    プライベートでは2015年に再婚、第2子を出産。

  • 違 克美さん

    素材の美味しさを際立たせるためにこれまで培ってきたフランス菓子の考え方や技術を活かし、 神奈川県産・横浜市内産の果物や野菜を使ったものを中心に生産者さんから直接仕入れ添加物を一切使用せずにコンフィチュールを作る『旅するコンフィチュール』を運営している。

    2003年 ル・コルドンブルーにて製菓ディプロム取得。これに前後して5年半のアメリカ生活、数度に渡るパリ、ベルギー滞在時に食に関する知識と経験を深め、現地で素材を調達し現地でコンフィチュールをつくる試みなども重ねる。フランス菓子、コンフィチュールを求め、フランス全土を旅したことが「旅するコンフィチュール」の名前の由来のひとつにもなっている。

    その後、パティスリー勤務やショコラショップ勤務を経て、2010年にカフェの立ち上げに関わり、メニュー企画、店舗運営マネジメント、スタッフ育成、現場での調理、接客と3年間店の運営を経験。

    2013年、自主事業『旅するコンフィチュール』をスタート。

    横浜の地産地消に取り組む『はまふぅどコンシェルジュ』『濱の料理人』のメンバーでもある。

    パーティ・イベントへのケータリング、料理教室などの他、小学校から大学までの児童や学生への講演、トークショーでのスピーカーなども務める。